ひょんな事から行くことになったクルーズ船の旅。
私の会社は閑散期に有給を取る仕組みになっており、私はその間国内外を旅行を楽しんでいる。山梨県で生まれ育った完全な内陸部出身のためか、水との触れ合いは学校のプールや学校行事での川遊びしか特筆する事はなく、海とは無縁の人生を過ごしてきた。しかし、2年前の国内旅行で訪れた茅ヶ崎の浜辺に心打たれ、それ以来すっかり海の虜となった。
両親の銀婚式が重なる今年、海の虜になった私は両親にクルーズ船の旅をプレゼントした。両親も海に縁が無いので、船酔いで旅を楽しめない心配もあり、船内1泊のプランを選択。ところが出発10日前に父はぎっくり腰になってしまい、旅をキャンセルするか、母と私で行くか協議した結果、父の分をキャンセルして母の分で私が行く事になった。
ある程度旅費を貯めて、思い切ってプレゼントした豪華客船の旅。横浜港から出港し、神戸へ進むルートだ。30代男性一人が乗船するには心細くなるような客層で、まず年齢が私よりひと回り(いやそれ以上)の方が多く、それこそ今回乗船する予定だった私の両親のような、長年連れ添った高齢夫婦の組み合わせもよくみられた。
私も誰か誘っておけばよかったかなぁと思ったが、そういうあてがあるわけではないな、と自分に言い聞かせながらデッキから横浜の景色を眺めた。どんどん遠ざかる横浜の街。しばらくボーっと外の景色を眺めていた。
景色に飽きて、部屋に戻ろうと思った頃に、背後から私の肩越しに話しかけてくる人が。振り返ると、母親より年上と思わしき女性がにっこり微笑みながらこちらを見つめていた。
ひょんな事から行くことになったクルーズ船の旅で、ひょんな事からこの女性と同行する事になった。